秘密保護法案等の科学者会議事務局長声明

kyutono9

2013年11月13日 00:34

杉浦公昭
 私が所属する日本科学者会議の事務局長が以下の声明を出しましたので、是非ご覧の上拡散して下さい。よろしくお願いいたします。

 事務局長声明 「国家安全保障会議設置法案」および「特定秘密保護法案」の上程を厳しく批判し、その廃案を求める 

 安倍政権は「国家安全保障会議設置法案」および「特定秘密保護法案」を上程し、前者は衆議院を通過し、後者の国会審議も始められた。

 「国家安全保障会議設置法案」は、安保・軍事に関わる情報や意思決定が内閣の一部に独占されるようにするものである。

 「特定秘密保護法案」は、「防衛、外交、スパイ等防止、テロ活動防止」の4分野で「特定秘密」を行政機関の長が指定し、「特定秘密」取扱者に「適性評価」をし、漏えいした公務員等や「不正アクセス行為」等をなした者に重い刑罰を科するものである。

 これら両法案は、安全保障にかかわる重要事項を一部閣僚が独占し、特定秘密を行政が専管的に指定するという基本構造上、本質的に、国民の知る権利を奪い、国権の最高機関たる国会の機能を損ね、内閣の暴走に対して主権者や立法・司法機関が歯止めをかけられなくするものである。すなわち、これらは日本国憲法の原理と相容れない法案であって、「報道の自由への配慮」や一部修正をもって問題は解消されない。

 両法案は、日本国憲法の明文改定が当面困難となった安倍政権が、与党が多数を占める国会で法律を強行的に制定することによって、実質的な改憲を断行しようとするものにほかならない。

 しかも、「日米同盟の深化」が際限なく進められているもとで、これら両法案が制定・施行されるなら、日本が「集団的自衛権の行使」に踏み切って米国の戦争に参戦する、あるいは、自衛隊に敵基地攻撃能力を保有させて近隣諸国に対して軍事力で対決していくといった事態が、現実の懸念となる。

 また、沖縄をはじめ軍事基地や訓練区域に接する地域では、今ですら不十分な国からの情報の提供がなされなくなり、住民や自治体が生命と暮らしを守るために行ってきた活動が違法行為とされて刑罰の対象となる可能性さえある。

 私たち研究者はもちろん、広く国民が、何が特定秘密であるかも明らかでないまま、秘密への不正アクセスを理由に逮捕され、重い刑に服せられる事態も現実のものとなるのである。国家安全保障会議では、議事録が作成され将来に開示される定めもない。「特定秘密」もまた、将来にわたって保存され開示される保障もない。このことは、日本において安全保障政策は科学的検討・批判が許されなくなることを意味する。これは、近代国家として許されないことである。

 狭義の安全保障・軍事問題に留まらず、宇宙、原子力、病原体をはじめ、様々な分野において、国民に開かれた自主的で民主的な研究教育の展開が、「特定秘密保護」により支障を来すことも懸念される。

 以上のことから、私たち日本科学者会議は、平和で持続可能な社会の構築を目指す学会として、両法案を厳しく批判し、廃案を求める。

 

20131111

日本科学者会議 事務局長  米田 貢


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